社長の自宅を買う!?

ほんの少しですが、私は社長から自宅の不動産を買ったことがあります。
廃業や事業再生の際、会社を整理すると銀行からの借金が残ることがあります。
ご存じのように、借金には社長の個人保証が付いています。
会社のほうで借金の返済ができなくなると、請求は社長個人に回ってきます。
法律上は、個人資産を投げ売ってでも返済しなければいけなくなります。
もし、自己所有の自宅を持っていたときは、それも手放さなければいけなくなるのです。
個人の資産ですから。
このあたりは、一応「経営者保証に関するガイドライン」などが作られ、社長に有利な状況に少しずつ進みつつあるのでしょう。
とは言っても、現場レベルではまだほとんどなにも変わっていません。
個人保証という名の連帯保証で縛られています。
そんな状況でも、自宅をどうしても残したいというニーズがあったりします。
「奥さんやお子さんのために」だとか。
ご高齢の方の場合、引っ越しして生活環境が変わることに対し、順応しづらくなる面もあります。
自宅を残すひとつの打ち手に『リースバック』というものがあります。
自宅を誰か第三者に買ってもらい、社長が賃貸で借りて、そのまま住み続けるという手法です。
これができれば、自宅は社長の個人資産ではなくなるので、銀行の借金の話とは切り離すことができます。
しかも、住む場所は変わらないし、外から見たら何の変化もありません。
同じ人が同じ場所に住み続けているのですから。
なお「じゃあとにかく名義を誰かに変えればいいのか」という話ですが、それはダメです。
ちゃんと時価相当での売買でなければ、後ほど詐害行為として債権者から糾弾され兼ねません。
たとえば、社長が自宅を売られるのを避けるため、友人にタダで不動産をあげて名義を変更したとします。
でも銀行からすれば、本来自宅の価値分の借金は回収できたはずです。
この第三者への不動産の名義移転で損害を受けたことになります。
「仕方ないですね」では済まされませんよね。
考えれば当然だと分かります。
さて、このリースバックですが、相手方が必要です。
不動産を買ってくれて、その不動産を貸してくれる人です。
実務上は、そんな人がいないため、涙を飲むことがよくあります。
親類等に声をかけても「そんなお金ない」とか「リスクは負いたくない」と逃げられてしまったり。
もちろん相手にも自分の生活や考えがあるので、こちらの都合を押し付けるわけにはいきません。
一部の不動産業者は、この買い手の役割を担うサービスを展開しています。
サービスの一環として自宅を買って、それを社長に貸すのです。
ただ、不動産業者は収益とリスクをシビアにみるので、やっぱり使えないケースが多いのです。
「不動産が人気のある地域じゃないからダメ」
「本来の値段よりも相当安く買わせてもらえないとダメ」
「結構な金額の賃料を払ってもらえないとダメ」
こんな感じで話がとん挫しがちです。
リースバックは、運よく条件がそろえば、という手法なわけです。
奥村は社長さんと今後どうしていくかの作戦を一緒に練ります。
当然、自宅や今後の生活のことにも話が及びます。
そこで、自宅を残したいけど、どうにもこうにもうまくいかない・・・
社長さんの苦悩する姿を見ていると、手を差し伸べたくなります。
そして、私にもリスクがありますが、状況によっては私の会社で買えないこともないというケースも。
そんなとき、つい、「ウチでどうにかしましょうか・・・」と申し出てしまうことがありました。
コンサルタントとしてここまで踏み込むべきかは、疑問のあるところです。
しかし、役に立てるならば、価値が提供できるならばという気持ちが勝ってしまうこともあります。
もちろん損をするわけにはいかないので、家賃等はお支払いいただかなければなりません。
それでも儲けるためではなく、やっぱり、こうして仕事をさせてもらうご縁があったのだから・・・という気持ちが本当のところなのでしょう。
こんな背景があり、少し社長の自宅を買い受けております。
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