子供とのコミュニケーションに悩む先代

「社長を譲った息子と全然会話が成り立たない」
相談者である70歳前後と思われる男性は顔をしかめて語りました。
創業者である社長は、昨年社長を子供と交代しました。
「好きなようにやらせてくれ」と主張する息子に対し、「だったらお前が社長をやってみろ」という流れで事業承継が行われたようです。
しかし、肩書が変わっても関係性まですぐに変わるものではありません。
話を聞くに、先代はいろいろと口や手を出してしまっている様子です。
経験のある先代には息子の仕事ぶりが歯がゆく、また、息子が行おうとする取り組みがうまくいかないことも想像できてしまいます。
それゆえ、細かく口を出したり、失敗する前に手を出してやめさせてしまっているのでしょう。
しかし、息子さんとしては面白くありません。
「親父は社長を譲ったくせに相変わらず干渉してくる。いつまでも自分が社長のつもりなんだ」ということに・・・
先代は、自分としては控えめにふるまっているつもりだと言います。
あくまで社長の顔を立てている、と。
一方、息子さんとしては、父から頭ごなしに言われているとしか感じないのでしょう。
この親子関係をどうしたらいいか?
きっと、息子さんのことは、ほうっておいて好きなようにならせるしかないのでしょう。
積極的に行こうとすればするほど逆効果になってきた模様です。
磁石ならば、お互いがS極になっているようなもの。
コミュニケーションを取ろうとして、近づこうとすればするほど相手(息子さん)の心は離れていく関係になっています。
これまでのアプローチを変え、息子さんが聞く耳を持ったり、お父さんの話を聞きたいと思うようになってくれることに期待するしかないのではないでしょうか。
必ず願うような結果になるかはわかりません。
しかし、我慢して待たなければ、会話ができるようになることはないはずです。
先代は私の見解に納得してくれました。
ただ、実際にできるかは分かりません。
干渉しないで放ったらかす。
簡単なようで実はとても大変なことでしょう。
上手いことやっていただきたいところです。
「ところで、なんで会話ができないといけないのでしょうか?」
面談の最後に思い切って聞いてみました。
先代の口からは何度も「息子との会話」という言葉がでてきました。
私は執拗にこだわる点に違和感を覚えていたのです。
先代は虚を突かれた顔をしました。
「それは会話ができないと会社の・・・」
「ではもし、会話ができないものの、息子さんがうまく経営をしたとしたら会社的にはどうでしょうか」
「・・・会社がうまくいくのならそれでもいいはずですね」
それからしばし沈黙が続きました。
「寂しかったのでしょうね、私も・・・」
ポツリと先代が漏らしました。
「会社のため」と自分を正当化させることで、先代は自分の本音まで見えなくなっていたような気がします。
でも、もっともらしい正論を吐けば吐くほど、余計に相手を自分の殻に閉じ込めてしまうことでしょう。
恥ずかしいとか関係なしに、自分の本音を自分で分かっておくことは大切なはずです。
ここから何かが変わっていくことを祈ります。
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